ADACHIGAHARA
出演者 ワキ・・・・郡智の阿闍梨祐慶(ナチのアジヤリユウケイ)
ワキツレ・・・同行の山伏
アイ・・・・能力(ノウリキ)
前シテ・・・・老女
後シテ・・・・・鬼女
舞台となった場所 陸奥国、安達原(福島県二本松市)
秋も終わりにさしかかる頃、紀伊国熊野(和歌山県)の山伏である祐慶は、他の山伏・能力
(お供)らと共に修行の為、各地を周る旅に出ていました。
一行が安達原にやって来た頃、日も落ちて闇が辺りを包み込みはじめました。
すると、はるか遠くに一つの明かりが見えて来たので一晩泊めてもらおうと、その明かりを
頼りに進むと一軒の庵にたどり着きました。
庵の主は老女で、事情を説明すると一行を泊める事を一度は断りますが、たっての頼みに
招き入れる事にしました。中には糸車があり、山伏の要望に応じて老女は糸を紡ぎながら
人の身のはかなさ等を語りました。
やがて、夜も更けて老女は閨(ねや)の中を絶対に覗かないようにと、言い残し薪を取りに
山へと向かいました。余りにも強く見てはならないと言われた為、能力はかえって不信に思い、
覗こうとしますが、山伏らに止められてしまいます。そこで、山伏らが寝静まった所を身計らい
閨の中を覗いてしまいました。
すると、そこには人間の死骸が山のように積み重なっていたのです。
能力は驚き、急いで祐慶に知らせると一行は急いで逃げ出しました。が、後から先程の老女が
鬼女の本性を現し、皆殺しにしてやると追って来るのでした。しかし、山伏の祈りに伏せられて
鬼女は風と共に闇の中に消えて行ってしまったのでした。
老女は閨の中に恐ろしいものを隠しているものの、山伏達の為に糸車を操りなから唄ったり
薪を取りに出たりと、とても彼らに好意的でした。閨を見るなと頼んだのも本性を
見破られたくなかったのでしょう。この様に、老女はまったく敵意は無かったのに約束を
破られた失望により鬼女となってしまい、その時の山伏に対しての怒りの舞は、
物凄い迫力ととなっています。
この曲目のように、見てはならないと言われながらも我慢できずに見てしまうという
タイプの話しはギリシャ神話や古事記などにもありますよね。みなさんが良く知っている
浦島太郎も、この安達原と同じ系列の内容だと言えるでしょう。
舞台に出ているつくり物は、閨を現し中を隠すように扉を広く開けないようにして演じます。
この様に人間の好奇心をあおる作品は、もちろん狂言にもあります。今も昔もこういった
気持ちは変わらぬだけに現代人にも受け入れやすい内容なのではないでしょうか。