
JINENKOJI

出演者 アイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・雲居寺門前の男
シテ(主役)・・・・・・・・・・・・・自然居士
子方・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少女
ワキ(シテの相手役)・・・・・・人商人
ワキツレ(ワキの助演者)・・・人商人の仲間
舞台となった場所 前場・・・・・京都東山雲居寺(京都市東山区高台寺付近)
後場・・・・・近江国琵琶湖畔(滋賀県大津市)
京都東山の門前に住んでいる男が、今日は自然居士が雲居寺造営の説法を行なう
七日目最後の結願(ケツガン)の日である事を話し、人を雲居寺に集めました。
そこへ説法を始める為に自然居士が現れました。すると1人の少女が手紙と小袖(着物)を持って
やって来ましたが、その小袖は亡くなった両親への供養の為に自分の身を売って得た物でした。
少女から受け取った手紙を読むとそこには両親の為に読経を願うという内容がつづられておりました。
するとそこへ、昨日買い取った14、5歳の少女が戻らないので探しにやって来たという人商人が
やって来ました。すると人商人はその探していた少女の姿を見つけると、すぐさま引き連れて行って
しまうのでした。
自然居士はこの可愛そうな少女に同情して、その日結願となる大事な説法を取り止めにして
少女の後を追おうと決心しました。
自然居士は少女から受け取った小袖を首に巻き大津の浜まで急ぎ、ちょうど船を
出そうとしている人商人達に追いつきました。そして持って来た小袖を投げつけて、裾を水に
濡らしながら船に取りつき、引き止め様とするのでした。少女を返す様にと言っても人商人は
一度買い取った以上は2度と返しはしないと言う規則があると言い出します。
負けずに自然居士も不幸な者を救う事が出来なければ2度と庵室へは帰らないと言う
規則があり、この少女と陸奥までも一緒に行き、命を取られてもこの船を降りはしないと
言うのでした。
やむなく少女を返す気になった人商人は条件を付けたのでした。その条件とは
自然居士に舞を舞って見せてくれと言う内容だったので仕方なく鞨鼓(カッコ)を打ちながら
舞を舞いました。
やっと少女を引き渡してもらい、軽い足取りで都へと帰って行く二人でした。
この自然居士という人物は13世紀終りから14紀始めにかけて実在した人物で
あり、禅宗の見習であったと言う。彼は説法をとても解りやすく面白く説き、舞を舞っては
人々の眠気を覚ますと言う事でと有名な人であった。
彼の性格は純粋で行動力にあふれ、目的を達成しようとする強い意志をもった青年で
あった。そんな自然居士が最終日の説法を投げ出してまでも少女を救おうとする決断の中には
「百聞一見にしかず」と言うことわざを実践したと言えよう。
この曲目は最初、狂言の口開けで始まる所が珍しく、自然居士と人商人との
会話のやり取りの巧みさ、橋掛かりを使用して、岸と湖上との距離感を出した演出など
能舞台の使い方が面白い。
舞を要求され、懸命に少女の為を思い舞を舞う自然居士の姿は心優しく清らかでありながらも
力強い意志を持った彼を象徴するかのような舞である。