TOHRU

              


        出演者           ワキ・・・・・旅僧
                  前シテ・・・・老人
                  アイ・・・・・所の者
                  後シテ・・・・源融の霊
      舞台となった場所    六条河原院の跡(京都市下京区)

  ある秋の事、東国から上がってきた一人の僧は、六条河原院の跡を訪れて

 休んでいると田子を肩に担いだ老人がやって来ました。話しを聞いてみると

 その老人は汐汲み(シオクミ)をしていると答えました。しかしここは、

 海辺でもないのに何故か?と尋ねると、老人はその昔この場所は源融大臣の邸宅で

 広大な庭に「塩釜の浦」を写した海辺だと言いました。

  源融は、毎日の様に難波の浦から海水を運ばせ、塩を焼きその風流を楽しんだ

 事や辺りの名所を教えました。やがて、汐を汲むかのような振りを見せたが、

 僧が気付いた時には既に老人の姿は消え失せていました。

  僧は、やって来た六条辺りの者から塩焼きの話しを聞き、先程の老人の話しを

 すると、それは融大臣が老人の姿を借りて現れたのだと言われ、読経を頼まれました。

  僧はもう一度会いたいと思い、夢の中での出会いを期待しつつ旅寝していると

 名月の中、貴人姿の融が現れ舞いを舞い、夜明けと共に月の都へ姿を消しました。


 この曲目は、贅沢にも風流を愛する源融の話しで、内容の展開でこれと言った

 ものはない。 約三千人もの人を使い塩の焼ける煙を楽しむだけの為に毎日海水を

 運ばせたそうです。
 
 前場では、老人が過ぎ去った日々を思い出しているが、後場ではガラッと変わって

 かつての優美な貴公子姿で登場し、月明かりの中で優雅に舞いを舞っている。

 この時、囃子の笛は独特の高い音色を出すのが特徴です。

僧は読経を頼まれていたが、それをしなかった。そしてまた融の霊自信も供養を
 
 頼まなかったと言う、夜が明けるまでのわずかな時間でさえ、昔の様に優雅に過ごせたら

 と願った2人の気持ちの現われなのかも知れません。


   

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